「死ぬって、いったいどういうことなの?」
幼いころに、周囲の大人たちに何度も同じ質問をしたことを憶えている。どの人に尋ねてみても、「死」とは身体や意識がこの世から消えてなくなることだ、といわれた。しかしわたしには、この世から消えてなくなることが「死」なのだ、ということがいまだにうまく想像できていない。年端もいかない子に、突然大きな難問を突きつけられた大人たちは、さぞかし面喰らったのではないかと思う。
そもそもわたしたちは「死」について、普段から考えることがあまりないままに過ごしている。死別などの経験から、「死」について考えるというよりも、実は死別と自身の感情との折り合いをつけることを「死」を受け止めることとして了解してきたのではないか。